研究データと神経構造が融合した青い抽象ビジュアル
NAW / RESEARCH 04

IMAGE: AI生成ビジュアル

RESEARCH / Dataset

LAION、1,000万時間のオープン動画データセット「LAION-BVD」を公開 — 80M動画・13億URLでマルチモーダル学習を民主化

Common Crawlから収集した13億の動画URLを起点に80M動画・55Mクリップ・3億フレームを整備。合成キャプション付きでViCLIPはInternVid比最大2.1%改善、CLAP/CLIPでもスケール則を確認。研究用途限定で公開。

LAIONは2026年8月29日までに、大規模オープン動画データセット「LAION-BVD(Big Video Dataset)」を公開した。Common Crawlから収集した13億件のプラットフォーム固有の動画URLを起点に、80M本の動画(合計1,000万時間)をダウンロードし、55Mのクリップと3億枚のフレームを整備した。非営利の研究用途に限定して提供し、論文(arXiv:2608.24845)GitHub(LAION-AI/BVD)、ダウンロードサイトを同時に公開している。

大規模動画データとそこで学習した基盤モデルが少数のプロプライエタリ企業に集中する中、オープンな再現研究の基盤を広げる狙いを掲げる。LAION-5B(58.5億枚の画像-テキスト)以来となる、映像・音声・画像を横断する最大級のオープンリソースとなる。

1,000万時間のスケールと構築手法

LAION-BVDは、Web上の動画をマルチモーダル事前学習にそのまま使える形へ整形した点が特徴だ。

  • 収集: Common Crawlから13億の動画URLを抽出し、80M本を実際にダウンロード。合計1,000万時間に及ぶ。
  • クリップ化: コンテンツを考慮したシーン検出で動画をクリップに分割し、55Mクリップを生成。各クリップに合成のビデオキャプションとオーディオキャプションを付与した。
  • フレーム抽出: シーンが切り替わるフレームを抽出し、3億枚の画像-テキスト対を作成。標準的なWeb画像コーパスとは視覚分布が異なり、相補的な事前学習ソースとして機能する。
  • 目的: 映像・音声・画像の3モダリティを一つのコーパスで事前学習できる設計。単一データセットでViCLIP/CLAP/CLIPの各系統を学習できる。

プロジェクトサイトでは「By the Numbers」として、1.3B URL / 80M動画 / 10M時間 / 55Mクリップ / 300Mフレームの5指標を掲げている。

ベンチマーク — ViCLIPで最大2.1%改善、スケール則も確認

LAION-BVDで学習したモデルの性能は、標準的な動画・音声・画像ベンチマークで検証されている。

  • Video-Language(ViCLIP): InternVidで学習したモデル比で最大2.1%上回り、10Mから50Mクリップへ学習規模を拡大するほど一貫して改善した。55Mクリップの合成ビデオキャプションが寄与している。
  • Audio-Language(CLAP): 動画から抽出した「in-the-wild」な音声を活用したCLAPが、他の大規模・未キュレーションな音声データセットと競合する性能を達成。モデル規模・データ規模の拡大でもスケール傾向を確認した。
  • Image-Text(CLIP): 動画フレーム由来のCLIPが画像-テキスト検索で強い性能を示した。動画フレームは既存のWeb画像とは異なる分布を持ち、既存コーパスを補完する効果が示された。

いずれも、データ規模・モデル規模の拡大に伴う改善が観測されており、さらなるスケールへの示唆を与える結果となっている。詳細は論文に記載されている。

公開形態と倫理・利用条件

  • ライセンスと用途: 研究目的に限定し、商用利用は不可。学術研究・再現性検証・安全性分析などを想定する。コンテンツ制作者の権利やプラットフォーム規約の尊重を求めている。
  • バイアスへの留意: Web由来の大規模データセットとして、言語・地域・トピックの偏りやステレオタイプを含む可能性がある。学習したモデルが同様のバイアスを継承しうる点に注意し、能力評価と併せてバイアスの評価・報告を推奨している。
  • 公開物: 論文プロジェクトサイトダウンロードページGitHubを整備。BibTeXもサイト上で提供されている。

LAIONは2022年のLAION-5B公開以降、オープンなマルチモーダルデータの提供を続けてきた。今回のBVDは、動画という最もデータ入手が困難なモダリティをオープン化する試みとして、基盤モデルの透明な評価と分散的な研究開発を後押しする。

出典