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GOVERNANCE / 著作権訴訟
Seattle TimesとNewsdayがOpenAI・Microsoftを提訴 — ペイウォール回避のスクレイピングと著作権侵害を主張、学習済みモデルの破棄も請求
米地方紙2社が9月4日、ニューヨーク南部地区連邦地裁に38ページの訴状を提出。ペイウォール迂回や著作権管理情報の削除、出力での逐語的再現、ハルシネーションによる商標希釈まで7訴因を列挙し、損害賠償に加え学習データセットとLLM自体の押収・破棄を求めている。
The Seattle Times CompanyとNewsday LLCは2026年9月4日、OpenAIの関連9法人とMicrosoftを相手取り、ニューヨーク南部地区連邦地裁(S.D.N.Y.、事件番号 1:26-cv-07644)に38ページの訴状を提出した。原告2社は合計30のピューリッツァー賞を持つ地方紙で、被告らがペイウォールを迂回して記事を無断でスクレイピングし、生成AIの学習・微調整・検索拡張生成(RAG)に利用したと主張。著作権侵害2件、DMCA違反2件、連邦および州の商標希釈化3件の計7訴因を立て、陪審裁判を要求している。以下、訴状の記載範囲に絞って整理する。なお、本稿執筆時点で被告側の反論は一次情報で確認できていない。
提訴の概要 — 原告・被告と中核的主張
- 原告: The Seattle Times Company(1886年創刊、ピューリッツァー賞11回)とNewsday LLC(1940年創刊、同19回)。代理人はKlaris Law PLLC。
- 被告: OpenAI, Inc.ほかOpenAI関連法人9主体とMicrosoft Corporation。訴状は2019年以降のMicrosoftによるOpenAIへの出資関係と、Copilot・Bing Chatへのモデル供給関係を列挙している。
- 中核的主張: 被告らが自動ボットによるスクレイピングで両社のサイトから記事を複製し、WebText・WebText2・Common Crawl・Bing検索インデックス由来のデータセットに取り込んでLLMの学習・微調整・グラウンディングに使った、とする(いずれも「情報と確信に基づく(upon information and belief)」主張)。
- ペイウォール回避の主張: Seattle Timesは2013年春から段階的なペイウォールを導入し現在は1ページビューのみ無料、Newsdayは2022年8月から購読者以外に本文を一切開示しないハードゲートを採用していると説明。被告らがこれを迂回して複製したと主張している。
- 両社の利用規約: 訴状は、Seattle Timesの利用規約(AIの学習・グラウンディング目的での利用禁止、クローラー・スクレイピング禁止)とNewsdayの利用規約(AI・機械学習の学習目的での利用禁止、自動手段による収集禁止)を引用している。
7つの訴因 — 著作権侵害、CMI削除、商標希釈化
- COUNT I(直接の著作権侵害): 登録著作物の複製・蓄積・学習データセット構築、生成出力による複製・二次的著作物の頒布が17 U.S.C. 501条に違反すると主張。
- COUNT II(間接・使用者責任): MicrosoftおよびOpenAI持株系法人が侵害を指揮・管理し利益を得たとして使用者責任を問う。
- COUNT III・IV(DMCA違反): 学習データ構築過程での著作権管理情報(CMI:記事タイトル・著者名・著作権表示・利用条件)の削除(1202条(b)(1))と、CMI削除済み著作物の頒布(同(b)(3))。訴状はOpenAIの抽出アルゴリズム「Dragnet」「Newspaper」がCMIを除去したと主張している。
- 逐語的再現の具体例: 2019年ボーイング737 Max墜落報道のピューリッツァー受賞記事について、見出し・日付・URLのみのプロンプトで88語連続の逐語的出力が得られたとする例、Newsday記事との対照表を掲載している。
- COUNT V〜VII(商標希釈化): 被告の生成AIが両社の商標(THE SEATTLE TIMES、NEWSDAY)と無関係な生成内容を結びつけて表示し、希釈化(blurring)と、ハルシネーションによる誤帰属での汚損(tarnishment)を生じさせたとして、連邦ランハム法15 U.S.C. 1125条(c)、ワシントン州法、ニューヨーク州一般事業法360-l条に基づき訴追している。
- フェアユースの否定: 被告らの利用は同一読者・広告主・購読料を奪い合う競合製品のための複製であり、変容的利用(transformative use)には当たらないと主張。2023年12月以降の先行訴訟の広報により被告らは通知を受けていたとして、故意性も主張している。
求められている救済 — 賠償・差止とモデル破棄請求
- 損害賠償: 著作権法504条に基づく法定損害賠償または実損害・利益返還の選択請求、DMCA違反ごとの法定損害賠償、商標希釈化についての利益計算・3倍賠償・弁護士費用。
- 差止: さらなる侵害行為の恒久的差止めと、商標の希釈的使用の差止め。
- 押収・破棄: 17 U.S.C. 503条に基づき、原告著作物の複製物および原告著作物・派生物を組み込んだ全LLMと学習データセットの押収・破棄を請求している。
- 市場の存在の主張: OpenAIがAP・NewsCorp・Axios・Axel Springer・The Atlantic・Financial Times・Dotdash Meredith・Vox Mediaなど10社超とライセンス契約を結び、開示済み3件だけで3億ドル超を支払ったとの報道を引用し、許諾市場の存在と被告が許諾を求めなかったことを主張している。
- 先行訴訟との関係: 訴状はNYT v. Microsoft(23-cv-11195)など同種訴訟がIn re OpenAI, Inc. Copyright Infringement Litig.(25-md-03143)として併合されていることに言及している。
留意点 — あくまで原告の主張であり立証はこれから
- 本稿の根拠の範囲: 本稿は原告提出の訴状の内容整理であり、ペイウォール迂回の成否や学習データへの取込みなど、被告の行為に関する事実認定は裁判所の判断を待つ必要がある。
- 被告側の見解は未確認: OpenAI・Microsoftの本件への公式見解は、本稿執筆時点で一次情報として確認できていない。
- 次の注目点: 被告側の答弁・却下申立て、MDL(25-md-03143)への併合の有無、503条に基づくモデル破棄請求への裁判所の扱いが次の確認材料となる。